房子のよもやま話Ⅰ 「絵本の選びかた」

赤ちゃん(0~3才くらい)と絵本の素敵な出会いのために

 絵本の種類は、本当に多様で、書店に行っても、どれを選んでよいのか 戸惑うばかり・・・ でも、そこで、あわてて選ぶことはしないでくださ いね。
選ぶ基準は、あくまでも自分の目。平積みになっているから、とか、話題の 本だから、とか、赤ちゃんが気に入ったから・・・などの理由で選ん だりはしないで下さい。なぜなら・・・

平積みや話題の本というのは?

  必ずしも、それが良質で、子どもの心の栄養になるから・・・という理由でおかれているわけではありません。
もちろん、中にはよい本もありますが、それよりも「売れる」「安い」「手軽」な本が多いのが悲しい現実です。

赤ちゃんが気に入った本というのは?

   赤ちゃんには、ストーリーとか絵のよしあしは、全くわかりません。だから、「目立つ」絵に興味を示します。
赤ちゃんが興味を示したからといって、それがよいものとは限りません。赤ちゃんは、全く無の存在。
これから育っていく過程で、 よいもの悪いものを見極めたり、ものの善悪の基準を育てたり価値観を育てていくのであり、植物に例えれば、まだやっと双葉 が地面に顔を出したばかり・・・という状態です。これから、どんな花を咲かせ、どんな実をつけるかは、育っていく環境しだい。 きれいな花を咲かせ、豊かな実をつけるためにも、「その場しのぎの赤ちゃんの関心を買う」のではなく、「長~い目で見て赤ちゃんを 育んでいく」ような、良質な本を選んで下さい。赤ちゃんには本物が必要です。

絵本はいつ頃から?

   その子によって、興味の示し方はまちまちなので、一概には言えませんが、「本」という形を理解し始めるのは、1才前後かな?と思います。それより、小さいうちは本もおもちゃもスリッパもタオルも関係なく、世の中すべてに同じように関心を示しているのではないでしょうか?この時期は、やさしい絵本を親が覚えて、本を使わず「語って」あげてはいかがですか?
 私の子どもは、この「語り」が大好きでした。お風呂の中、泣いている時、乗り物に飽きたときなどに耳元で同じ話(3つぐらい)を語ると、いつも興味深い顔でじっと聞いていました。 赤ちゃんへの語りに使うのは
 ①リズム感のある言葉で書かれていて、②繰り返しがあるものがよいように思います。

1才前後の本の選び方は?1/2

   さて、少し大きくなって、お誕生日を過ぎたころからは、少しずつ絵本に親しんでいくとよいかな、と思います、 ファーストブックの条件としては
①1ページに大きな単純な絵が1つだけ描かれている
②明るくはっきりした、でもどぎつくない色で描かれている
③よく知っている身近なものが描かれている(人の顔とか、動物、車、哺乳ビン、おもちゃ、食べ物etc)
④厚紙仕立てのボードブックタイプ
⑤くり返しがある
⑥言葉にリズムがある
ものがよいと思います。
① 赤ちゃんは、耳に比べて目の発達が遅いので、複雑な絵は理解できません。
② 赤ちゃんは、中間色が理解できません。大人が見て「ステキだな」と思うようなシックな色合いにも興味を示しません。明るくはっきりした色のきれいなものを選んでください。でも、ここで難しいのは、ドギつい色合いのものを選ばないこと。目安としては、「大量生産で安っぽい」感じのものは避けたほうがよいと思います。淡いやさしい色合いのものも、もう少し大きくなるまで待ちましょう。
③ 赤ちゃんは、自分のよく知っているものに関心を示します。これは大人だって同じだから、良くわかりますよね。赤ちゃんは、人でも動物でも正面を向いた顔がとても好きです。良く知っているものを絵本の中で見つけたとき、赤ちゃんは全身を使って喜びます。このように、なるべく身近で良く知っているものが画材になっている本から選んでいくと、本の世界に入りやすいと思います。 >>>つづく

1才前後の本の選び方は?2/2

   <<<つづき
④初めて、赤ちゃんが手にする本は、15cm位のボードブック(厚紙でできた本)がよいと思います。赤ちゃんには、まだ絵本もおもちゃも区別がつかないし、なめたり、しゃぶったり、投げたり、破いたり…。「物」に対する興味は尽きません。こんな時期には、ボードブックが一番です。これなら、なめてもしゃぶっても投げてもせいぜい端がよれよれになるくらい。本として読む(見る)のに不自由はしません。また、「やぶるのでは?くしゃくしゃにするのでは?」とおかあさんがハラハラすることもないので、安心して赤ちゃんに渡せます。
⑤ 0才のところでも書きましたが、幼い子は、くり返しの話が大好きです。次にも同じ事が起こるという「予想」ができ、それがあたることに大きな喜びを感じます。これが実生活の中でも「予想」の芽を育てることにつながっていくと思います。
⑥ 赤ちゃんに話し掛けるときの母親の言葉には、「マザーリング」といって特別の抑揚があるそうです。
声のトーンが自然に高くなり、語尾が上がるという特徴があります。これは、赤ちゃんを愛するがゆえの自然の行ない。なので、せっかく実生活の中で自然に行なっている「マザーリング」を打ち消すような言葉、で書かれている本を選ぶのはやめましょう。絵本を選ぶときには、絵と同じ位に言葉も大切なもの。ついつい、目は絵だけに向きがちですが、リズム感のあるやさしい言葉で書かれているものを選んでくださいね。
読むのはおかあさん(おとうさん)のひざの上でも、おとなりでも、その子が好きな場所でよいと思います。でもなるべくくっついて読んで下さいね。本は子どもにめくらせて、ゆっくりと読みましょう。もちろん、子どもが早くめくってしまっても怒ったりしないで。最初のうちは「本は親子で遊ぶためのひとつの小道具」位の軽い気持ちでもいいと思います。大切なのは子どもが読書タイムを楽しみの時間、と感じるようになってくれること。だって、読書タイムは、子どもがおかあさん(おとうさん)と同じ時を共有できるステキな時間なのですから。読もう、読ませようとあせらず、ゆったりとしたステキなひと時を楽しんでください。

2才前後の本の選び方は?

   赤ちゃん時代は、せっかく本を読んであげても、文が終わらないうちに勝手にめくってしまったり、ただめくるだけで、ちっとも見なかったり。「ちゃんと見て」と思って読んでいると、親がイライラすることばかり赤ちゃんはやってくれます。 でも、それに負けないで。 その時代をイライラせずに、「これが『今』のこの子の楽しみ方なんだ」と、おおらかに構えて絵本読みを続けていると、2才を少~し過ぎたころから、驚くほど本に興味を示すようになります。ストーリーのある本も理解できるようになり、絵本本来の楽しみ方(お話を聞きながら、すみずみまで絵を見て、イメージを膨らませる)ができるようになります。親にとっても子にとっても、これからが「楽しい読書タイム」の始まりです。
絵本選びのポイントは、「1才前後の本の選び方」のところで書いたものから、①④を抜いたもの、と考えればよいと思います。
この時期に注意しなければならないことは、
①何度も「同じ本を読んで」というリクエストに十分答えてあげること
② 無理にたくさん読みすぎたりしないこと
です。何度も同じ本ばかり読まされると、大人は面倒くさくなって、「たまには違う本も読ませて!」という気持ちになりがちですが、何度も読んで欲しいのは子どもの特徴であり、その子がその本の中に自分の欲しているものを見つけたという、うれしいメッセージでもあるのです。なので、子どもの「何度も読んで」を面倒くさがらないで楽しみましょう。
あと、子どもが望まないのに(望んでもですが)、沢山の本を読むことにはあまり意味がありません。それより、同じ本を十分に楽しむ方が、ずっとずっと子どもにとっては意味があると思います。

子ども時代の全ての年齢に(赤ちゃんから高校生まで)共通して1/2

   ① 本を選ぶときのひとつの目安として、本の最終ページに載っている「版数」の多いものを選ぶ、ということが挙げられます。版数が多いということは、それだけ長い年月、たくさんの子どもに愛されてきたしるし。なので、絵本(本)選びに迷ったとき、版数の多いものを選ぶとあまり間違いがありません。でも、もちろん出版されたばかりの本の中にもよい本はあるので、あくまでも、ひとつの目安ですが…。
② どの年齢になっても共通して言える絵本選びのポイントとしては、作者のメッセージ(子どもをどのように捉え、子どもに何を伝えたいか)が感じられるもの、そしてそれが親の意向に合っているものがよいと思います。子どもだましの大量生産のものは、その場しのぎにはなっても、決して子どもの心の栄養となることはありません。
③その子の興味や発達より難しいものは選ばないで下さい。
子どもは(大人もですが)理解できないものには、関心を持てず、すぐに飽きてしまいます。
なので、赤ちゃんには、できるだけ単純な絵のもの、少し大きくなってからも、ちょっと簡単すぎるかな、と思うくらいの絵本から選んでみてください。
 これは、子どもが大きくなって、おかあさんの関心が「知育」に移れば移るほど言えることですが、知的発達を促そうと、その子の興味や発達より難しい本を与えることは、絶対に止めてくださいね。ただ、本ぎらいになるだけです。  また、よく本の裏表紙に書かれている「何才から」というのは、単なる1つの目安に過ぎないということも忘れないで下さい。 >>>つづく

子ども時代の全ての年齢に(赤ちゃんから高校生まで)共通して2/2

   <<<つづき
「もう○才なんだから○才用の本が読めるハズ」とか「この子は○才なのに○才向けの本が理解できない」とか、それにとらわれて、子どもが意に添わないとイライラするのは、本当にばかばかしいことだと思います。大切なのは、その子その子の興味と理解です。「その時その時に適切な」「その子に合った」本を選んでいけば、本嫌いになることなんて決してないはず。4才の子が、「赤ちゃん向けの本が大好き」でも、ちっとも構わないと思います。
きっとその子にとっては、その本に描かれている何かが、その時期に、とっても必要なものなのでしょう。それを十分におかあさんが認めてあげれば、ある時ふと「こんな本も、もう読めるんだ」とびっくりする時が来ることと思います。本のレベルは、少し幼い位でよいと思います。
難しい本の表面だけを理解するより、少し幼いくらいの本でもすみずみまで、文章にたとえたら「行間まで理解して」楽しむ方がずっとずっと意味のあることだと思います。これは、高校生になっても同じです。
くりかえしになりますが、その子のその時のレベルより難しい本を選ぶことには何の意味もありません。本嫌いを育てるだけです。長~い目で見て、その子に合ったレベルの本を選んでくださいね。

それでは今からはじめましょう。赤ちゃんとのラブラブ読書タイム!荒川 佳美

   毎月第2火曜日午前10時30分から1時間「絵本の読み聞かせ」をしています、ぜひご参加下さい。<< 予約制です >>
その他、地域の子ども会やクリスマス会、育児サークルなどにも「絵本読み」に行きます。 ご希望の方は、石川先生までご相談下さい。